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子どもによる事故,親の責任どこまで
2015.04.24

子どもが事故を起こした場合、親などが監督責任を怠っていれば子どもの代わりに賠償責任を負うと民法714条で規定されています。親は監督義務を怠っていなければ責任を負わないことになるのですが,その立証は難しく,責任を免れるのは不可能と言われてきました。

平成27年4月7日,親の監督責任がどのような場合に免れるのかについて,最高裁判所で判決がありました。

事案は次のとおりです。

11歳だった少年が、放課後に校庭で友人らとサッカーをしていた際、ゴールに向けて蹴ったボールが外の道路に飛び出した。そこにバイクで走ってきた男性が、ボールをよけようとして転倒。足を骨折した。直後に認知症の症状が出て、事故から約1年半後に肺炎で死亡。

遺族は,約5000万円の損害賠償請求訴訟をし,第1審,第2審とも,子どもの過失を認め,両親に約1100万円の賠償を命じていました。

これに対し,最高裁判所は,

「責任能力のない未成年者の親権者は,その直接的な監視下にない子の行動について,人身に危険が及ばないよう注意して行動するよう日頃から指導監督する義務があると解されるが,本件ゴールに向けたフリーキックの練習は,上記各事実に照らすと,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえない。また,親権者の直接的な監視下にない子の行動についての日頃の指導監督は,ある程度一般的なものとならざるを得ないから,通常は人身に危険が及ぶものとはみられない行為によってたまたま人身に損害を生じさせた場合は,当該行為について具体的に予見可能であるなど特別の事情が認められない限り,子に対する監督義務を尽くしていなかったとすべきではない。」

と判断しました。

 

同じく民法714条の親の監督責任が問題となった事例として,小学1年生が校舎で「鬼ごっこ」をする際,おんぶしてもらった子が,背負った子どもが転んでしまったため,一緒に転んで怪我をした事例があります(最高裁判所昭和37年2月27日判決)。これについては,「一般に容認される遊戯中に加えた傷害は違法性がない。そもそも,違法な行為ではないから両親も責任を負わない。」と判断されていていました。

 

今回の最高裁判決では,子どもがボールを蹴り出した行為は,第三者との関係では危険を有する行為であったが,通常は人身に危険が及ぶような行為であるとはいえないとした上で,どのような場合に親の監督義務違反はないと判断するか基準が示されていて,非常に参考になる事例と思います。