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民法(相続法)の改正① ~配偶者の保護~
2018.07.13

1 配偶者居住権の新設

 

① 配偶者短期居住権

 

居住建物の所有者である相続人が死亡し,残された配偶者は,住み慣れた建物に住み続けたいと希望した場合,これまでは使用権限がはっきりしませんでした(最高裁判決平成8年12月17日で,「他の相続人との間で使用貸借契約が推定される。」として保護していました)。

そこで,相続時に同居していた配偶者は,遺産分割がまとまるまでの間等,一定期間,無償で住み続ける権利(=配偶者短期居住権)が認められました。

 

② 配偶者居住権

 

残された配偶者が遺産分割において,①の短期間のみならず,ずっと住み慣れた建物に住みたいと希望した場合,これまでは,建物を取得するか,建物を取得した他の相続人から賃借しなければなりませんでした。

しかし,建物を取得した場合,建物の評価が高額でその他の遺産(預貯金)が取得できず,生活に困ったり,他の相続人と賃貸契約の合意ができなければ住み続けることができなくなったりするとの問題がありました。

そこで,配偶者に居住用建物の使用はできるが,処分ができないという権利(配偶者居住権)を認め,遺産分割の際に,配偶者が居住建物の所有権を取得する場合よりも低廉な価額で居住権を確保することができることにしました。

例えば,遺産が自宅建物2000万円,預貯金2000万円,

相続人は,配偶者と子一人=相続分は各1/2

これまでは,配偶者が自宅建物に住み続けたいと希望した場合

配偶者     自宅建物 2000万円      預貯金0円

子                                    預金2000万円

と分けざるを得なかったところ,次のように分けることが可能となります。

配偶者 自宅の居住権1000万円    預金1000万円

子   自宅の所有権1000万円      預金1000万円

但し,上記は例として居住権の評価額を単純化しましたが,実際は,配偶者居住権の存続期間が原則として「終身」となっており,評価額をどのように算定するか課題もあります。

 

2 婚姻期間が20年以上の夫婦間の居住用不動産の贈与は特別受益外

これまでは,夫婦間で居住用不動産の贈与がされた場合であっても,特別受益に当たるとして,配偶者の相続分からその居住用不動産の価額を控除することになっているため,贈与しても最終的に配偶者の取得額は贈与がなかったときと変わりませんでした。

これについて,配偶者の貢献という観点から,法定相続分を増やすということではなく,居住用不動産(配偶者居住権を含む)の贈与は特別受益として評価せず遺産分割の計算対象から外すことによって,結果的に,配偶者の取得分が多くなることにしました。

自宅不動産   2000万円を生前に配偶者に贈与

相続時の預金  2000万円

相続人     配偶者と子一人

自宅不動産の2000万円の贈与は配偶者

預金  配偶者=1000万円,  子=1000万円