○ 「セクハラ=セクシュアルハラスメント」の法的責任
某大臣が,「セクハラ罪という犯罪はない。」と発言をして,物議を醸しております。
確かに,「セクハラ=セクシュアルハラスメント」という言葉を使い,これを直接禁じた法律はありません。
しかし,セクハラ行為の内容によって,様々な法律などを根拠に損害賠償請求や刑事責任が認められています。
職場における「セクハラ」については,いわゆる男女雇用機会均等法11条で,
「①職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受けたり(=対価型)、②または当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されたりすること(=環境型)のないよう,適切に対応をするために必要な体制の整備及びその他の雇用管理上必要な措置をしなければならない。」と規定されています。
セクハラ裁判では,行為の内容に応じて,下記の法律などを根拠にして当該セクハラ行為者のみならず,企業に対しても損害賠償責任が認められています。
民法
415条 債務不履行(=職場環境配慮義務違反)による損害倍賠償責任
709条 不法行為による損害賠償責任
715条 使用者等の責任
719条 共同不法行為者の責任
○ 取引先の社員からのセクハラ
男女雇用機会均等方11条で雇用管理上の措置を講じる義務がありますので,セクハラ行為者が社外の者であっても,自社の労働者が受けたセクハラを放置すれば,労働者を雇用している企業は職場環境配慮義務違反による責任を問われることになります。
取引先のセクハラ行為者は,個人の名誉や尊厳に対する侵害,いわゆる人格権侵害による不法行為責任を問われることになり,取引先企業は,使用者責任を問われることがあります。