以前,「民法の相続分野について見直しをする議論が法制審議会でなされることになった」と,ブログで書きました。
その後,どうなったのかな・・・と思っておりましたが,「配偶者の法定相続分が3分の2に」との見出しで新聞報道されているとおり,このたび,法制審議会の中間試案が公表されました。法制審議会の中間試案(平成28年6月21日)は法務省のHPで読むことができます。
それによると,配偶者の法定相続分以外に,遺産分割における預金の扱いや,遺言など,様々な見直しが検討されていることが分かります(下記のとおり)。
「配偶者の法定相続分」一つとっても,配偶者の貢献の有無や程度を反映すべきとの考えはもっともですが,財産が婚姻後に一定割合以上増加した場合に増やす(甲案)といっても,婚姻期間が長ければその立証も難しそうですし,「一定期間すぎた場合に3分の2」(乙案)とすると,その期間に僅かに足らない場合は2分の1となってしまうのは不公平な感じもします。
なかなか,理念を形にするのは難しそうです。
(中間試案の概要)
(1) 配偶者の居住権の保護
配偶者が被相続人所有の建物に無償で住んでいた場合,そのまま住み続ける権利(短期 居住権,長期居住権)を認める。
(2) 遺産分割に関する見直し
① 配偶者の相続分の見直し
(甲案)
遺産が婚姻後に一定割合以上増加した場合,割合に応じて配偶者の相続分を増やす。
(乙案)
結婚して一定期間(20年~30年)過ぎた場合,配偶者の相続分を2分の1から3分の2に引き上げる(乙-1案=夫婦の合意が必要。乙-2案=当然に3分の2)。
② 預金債権等の可分債権の遺産分割における扱い
(甲案)
預金債権等も遺産分割の対象に含めるが,相続人は,遺産分割前でも法定相続分に応じて権利行使をすることができる。
(乙案)
預金債権等も遺産分割の対象に含め,相続人は,遺産分割前は,相続人の全員の同意がなければ権利行使することはできない。
※遺産分割が整うまで預貯金の払い戻しができなくなるため,裁判所の判断で預貯金の払い戻しを受ける制度も検討。
③ 遺産分割の一部分割と残余の分割におけるルール化
(3) 遺言制度に関する見直し
① 自筆証書遺言の方式緩和
② 遺言事項及び遺言の効力等に関する見直し
③ 自筆証書遺言の保管制度の創設
④ 遺言執行者の権限の明確化等
(4) 遺留分制度に関する見直し
(5) 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人以外で,被相続人の事業に関する労務の提供や,療養看護などに努めた人は,相続人に金銭の請求ができる。