認知症などで預金を自ら引き出せなくなり,代わりに親族らが求めた際に,銀行はどうするのか?
こうした対応に関し,令和3年2月18日,全国銀行協会が「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」として,まとめて公表しました。
状況に応じて,想定される取引状態別に,分かりやすくまとめられていましたので,以下,引用させていただきます。
(1) 通常取引
本人に認知判断能力がある場合は、通常取引を行う。
(2) 認知判断能力が低下した顧客本人との取引
① 認知判断能力が低下した顧客本人との取引
親族等に成年後見制度等の利用を促すのが一般的である。
上記の手続きが完了するまでの間など、やむを得ず認知判断能力が低下した顧客本人との金融取引を行う場合は本人のための費用の支払いであることを確認するなどしたうえで対応することが望ましい。
② 保佐人・補助人や任意後見人が指定された後の顧客本人による取引
預金規定等の定めにもとづき保佐人・補助人の届出を受領している場合、 保佐人・補助人の同意を確認するなど、各行の取引手順に則って対応する 必要がある。
任意後見契約が締結されている場合、本人の認知判断能力に問題がない 時点においては、本人との取引が可能であり、任意後見監督人の選任後, 医療費等で至急の支払いが必要な場合には審判前の保全処分を活用することも考えられる。
(3) 法定代理人との取引
法定代理人であることを確認のうえ、各行の取引手順 に則って対応する。
(4) 任意代理人との取引
本人から親族等への有効な代理権付与が行われ、銀行が親族等に代理権を付 与する任意代理人の届出を受けている場合は、当該任意代理人と取引を行うことも可能(本人の認知判断能力に問題がない状況であれば、本人との取引 が可能なケースもある)。
(5) 無権代理人との取引
親族等による無権代理取引は、本人の認知判断能力が低下した場合かつ成年 後見制度を利用していない(できない)場合において行う、極めて限定的な 対応である。
成年後見制度の利用を求めることが基本であり、成年後見人等 が指定された後は、成年後見人等以外の親族等からの払出し(振込)依頼に は応じず、成年後見人等からの払出し(振込)依頼を求めることが基本である。
本人が認知判断能力を喪失していることを確認する方法としては、本人との 面談、診断書の提出、本人の担当医からのヒアリング等に加え、診断書がない場合についても、複数行員による本人面談実施や医療介護費の内容等のエ ビデンスを確認することなどが考えられる。対面での対応が難しい場合には、 非対面ツールの活用等も想定される。
認知判断能力を喪失する以前であれば本人が支払っていたであろう本人の 医療費等の支払い手続きを親族等が代わりにする行為など、本人の利益に 適合することが明らかである場合に限り、依頼に応じることが考えられる。
無権代理の親族等からの払出し依頼に応じることによるリスクは免れないものの、真に本人の利益のために行われていることを確認することなどにより、当該リスクを低減させることができる。
預金が僅少となり、投資信託等の金融商品しかまとまった資産として残って いない顧客の医療費や施設入居費、生活費等の費用を支払うために、親族等 から本人の保有する投資信託等の金融商品の解約等の依頼があり、やむを得ず対応する場合、基本的には上記の預金の払出し(振込)の考え方と同様で あるが、投資信託等の金融商品は価格変動があることから、一旦、解約等を 行った場合、預金と異なり、原状回復が困難である。この点に鑑み、金融 商品の解約等については、より慎重な対応が求められる。