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頭髪についてなぜ校則があるのか?
2017.12.20

生まれつき髪が茶色いのに、黒く染めるよう教員らに何度も指導されたとして、大阪府立高校の生徒が、平成29年9月,府に約220万円の賠償を求める訴訟を提起したとの報道がありました。

 

頭髪についての校則で,かつて,中学校に丸刈り校則というものがあったのを思い出しました。

いまでは,丸刈りの男子生徒を見かけることの方が珍しいですが・・・。

 

熊本地方裁判所判決昭和60年11月13日は,

町立中学校長が制定した男子生徒の髪形を「丸刈,長髪禁止」と定める校則の無効確認・損害賠償請求を,同中学校を卒業した元生徒及びその両親がした事例です。

裁判所は,

丸刈が、現代においてもつとも中学生にふさわしい髪形であるという社会的合意があるとはいえず、スポーツをするのに最適ともいえず、又、丸刈にしたからといつて清潔が保てるというわけでもなく、髪形に関する規制を一切しないこととすると当然に被告町の主張する本件校則を制定する目的となった種々の弊害が生じると言いうる合理的な根拠は乏しく、又、頭髪を規制することによって直ちに生徒の非行が防止されると断定することもできない

と判断しました。

しかし,

現に唯一人の校則違反者である原告に対しても処分はもとより直接の指導すら行われて

いないことが認められる。右に認定した丸刈の社会的許容性や本件校則の運用に照らすと、

丸刈を定めた本件校則の内容が著しく不合理であると断定することはできない。

として,結局,請求を認めませんでした。

 

最高裁判所判決平成8年2月22日は,

市立中学校の「中学校生徒心得」に「男子の制服は,次のとおりとする(別図参照)」とした上で,別図において「頭髪・丸刈りとする。」とする定めや,校外生活に関して,「外出するときは,制服又は体操服を着用し(公共施設又は大型店舗等を除く校区内は私服でもよい)」との定めが置かれていることについて問題になった事例です。

「中学校生徒心得」は「次にかかげる心得は、大切にして守ろう。」などの前文に続けて規定を掲げているもので,各定めに違反した場合の処分等の定めは置かれていないとして,訴訟の対象とならないと判断されました。

 

今回のケースは,校則に基づき厳しい指導もなされているようですので,これらの丸刈り控訴に対する裁判所とは違う判断がなされるはずです。

ちなみに,今回の公立高等学校ではなく,私立高等学校で,「パーマ禁止」の校則について,最高裁判所判決平成8年7月18日は次のように判断しています。

 

パーマをかけることを禁止しているのは,高校生にふさわしい髪型を維持し,非行を防止するためである,というのであるから,社会通念上不合理なものとは言えない

 

頭髪についてなぜ校則があるのか?

生徒にふさわしい髪型をさせることによって,非行を防止することができるという考え方が,根強いのでしょうね。

ただ,この最高裁判所の判断から20年が経過しており,「社会通念」というのも変化していると思いますので,どのような判断になるのか興味深いです。