「マタハラ降格に賠償命令,女性が逆転勝訴」と,平成27年11月17日付けの新聞報道を見ました。
あれ,以前に聞いたことがあるような・・・と思って,記事を読み進めていくと,平成26年10月23日,最高裁判所で,違法として判断し高等裁判所に差し戻されていた事件の差戻審でした。
最高裁判所が広島市の病院に理学療法士として勤務していた女性が妊娠を理由に降格されたことが,男女雇用機会均等法に反するかが争われ,1審,2審では,女性の請求は認められなかったが,最高裁判所で,以下のような判断がなされていました。
(1) 女性労働者につき、妊娠,出産,産前産後の休業又は軽易業務への転換等を理由に,解雇その他の不利益な取扱いをすることは均等法9条3項に反して違法であり、無効である。
(2) 軽易業務への転換を契機として降格させることは、原則として不利益な取扱いにあたる。例外的に、次のいずれかの場合には、法の禁止する不利益取扱いにはあたらない。
① 労働者が自由な意思に基づいて降格を承諾したと認められる合理的な理由が客観的に存在するとき。
② 降格させることなく軽易業務に転換させることに業務運営などの業務上の必要性から支障があり、諸般の事情に照らして、降格の措置が均等法9条3項の趣旨目的に実質的に反しないと認められる特段の事情があるとき。
(3) ②につき審理が不十分であるとして広島高裁に差し戻す。
差戻審で,女性が請求していた精神的慰謝料も含めてほぼ請求通りの約175万円の賠償が認められていますが,女性が育児休業を終えて平成21年10月に職場復帰して降格処分のままであることに異を唱えてから,地方裁判所→高等裁判所→最高裁判所→高等裁判所と最終的な判断に至るまで約6年の歳月が流れています。
もう少し,早い段階でどうにかならなかったのか・・・という思いと共に,今回の判例が,ルールとして機能し,女性労働者が働きやすい環境が増えていくことができれば,意味のある判決だと感じております。